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食パンの歌 ~太郎に~

ノートにひとつ
詩が眠っていました

今年も
みなさんの
日常とともにある
ひときれのパンで
ありたいとおもいます
どうぞよろしくお願いします

ルヴァン上田店では
下記日程で遅めのお正月休みを頂きます
1月16日(水)~23日(水)

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おまえも知っているように
私たちの家では
めったにパンを食べない
たまに食パンを食べるのは
病人が出たときか
順子が熱病のように
食パンを食べたくなったときか
思いもかけぬお金が入ったときか
である
家の中に食パンが一本あると
それだけでたいした幸福に感じる

さて太郎
おまえは二十歳を目前にして
これからこの家を出
島を出て東京へ行く

東京というところは
食パンなどありふれた食べ物で
たとえば食卓に
ひときれの食パンがのっていて
それをみすぼらしい食べ物と感じ
いつか食卓の上の一切れの食パンを
そのように感じて
見向きもしなくなるときが
くる

戸棚に入れたまま
カビを生やかしたり
冷蔵庫の中で
カチカチに固まらせてしまったり
するときが
くる

その時は(よく覚えておいてほしい)
父親である私の思想が
死に面しているときであり
ひとつの真理が
死に面しているときである

カライモよりは麦の飯
麦の飯よりは真っ白な食パン
食パンよりは耳なしのサンドイッチと
夢を追いかけているように見える
けれどもそれは間違っている

僕たちは
本当は
ただ
命の源郷を
求めているだけなのだ

山尾三省 詩集より
by uedalevain | 2013-01-10 08:02 | ちかごろのこと


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